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housecat 'f'

シュレーディンガーの猫に関する考察は専用のページに譲る。


騙されてはいけない。こいつは元より我々のいう“猫”などではないのだから!

おそらくは迷宮に生息する、四つ足の、名前のなかった生物に便宜上「」という名前を与えているだけだという推測も成り立つであろう*1

ネズミイモリ程度ならまだしも、なぜノームや武装したドワーフ、さらには街の見張りオーガまでもがああも簡単に倒れるのか?
私の独自の研究の結果、ジャッカルドワーフ見張りが弱すぎるのではなく(ジャッカルだけはいかにも弱すぎるが)、この迷宮内で「猫」と呼ばれる生物があまりにも強大すぎるという結論に至った。

まず第一にその行動速度。通常の人間の1.5倍ほどであり、強さの一要因となっている。
とはいえこれだけならさほど驚くには値しないかもしれない。
そして第二に、思いのほか打たれ強い。弓矢の攻撃数回程度では倒せないことが多いのだ。
他の(普通の)生物の耐久力を鑑みるに、これは驚くべきことと言っていいだろう。

そして次に、何より怖いのはその攻撃能力である。
信じがたいことだが、鎧兜、ブーツに小手といったもので完全武装している人間でさえ油断するとただの「ひっかき」で相当な傷を負わされる。
場合によっては致命的でさえある。
もちろん中途半端な武装しかないような状態では言うに及ばないであろう。
さらに恐るべきことに、迷宮内の生物のほとんどはこの「猫」の危険性に気付いていないのだ!
あるいは気付かないふりをしたいのだろうか、自らが攻撃を受けるような立場になければあえて無視しようとするものがほとんどであり、そのためにの陳列物を盗まれたり、あるいは出会い頭にその爪で引き裂かれてしまう住人たちも非常に多いと聞く。

通常の、地上にいる“猫”にはほとんど見られない人間への従順さと忠誠心、「小猫」から「大きな猫」に至るまでの成長速度、言語を絶する凄まじい食欲などなど、これがいわゆる“猫”とは別の生物である証拠は枚挙に暇がない。*2

ここで興味深いデータを紹介しよう。
ご存知の通り迷宮のモンスターには体重と栄養価が設定されており、などの他の(恐らく我々の知る物と同一の)猫科の生物では、”栄養価=体重/2”が成り立っている。
然るにこの「猫」と呼ばれる生物では”栄養価=体重”なのだ!
これだけでも明らかに他者とは一線を画しているが、それにしてもここまでの高密度ボディーを実現しているモンスターは稀である。
我々の想像を絶する身体構造を採っているのか、あるいは亡霊のように異世界の構成物質から成り立っているのかもしれない。
貴方が生物学者ならば解剖してみたいと思うかもしれないが、やめたほうが良いだろう。メスなどで立ち向かえる相手ではないのだから……。

ただの猫と侮るなかれ、敵に回せばゴブリンコヨーテなどよりもはるかに恐るべき存在なのだ。
残念なことに、危険性を知らぬままこの「猫」に惨殺されてしまう冒険者も少なくはない様。
この「猫」への対策としては、手持ちの食物を投げ与えれば忠実なペットになるか、あるいは少なくとも敵意を取り除くことはできるだろう。
この迷宮の何たるかを十全に理解するまでは、そうすることを強くお勧めしたい。

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