*アンホーリィと不幸せの石 [#id26fbb2]

それを拾ってしまったのはもちろん無知ゆえでしたけれど、[[運命の大迷宮]]に挑んで間もない者にしてみれば、見る物すべてが役立つ物なのではないかと思うのも許されることでしょう。

それは、[[灰色の宝石]]でした。薄汚れた冒険者とはいえ女、[[宝石]]と見れば目の色は変わります。何より灰色というのは、持っているだけで持ち主に満月のまじないを永遠にとどめるという、あの噂に聞く[[幸せの石]]と同じでしたから。

今にして思えば、そんな噂を覚えていたことが不運だったかもしれません。まこと市民、噂は反逆です。大迷宮も入り口近い場所に、そんな宝が落ちているはずもありません。後で聞いたところによると、[[ノームの鉱山]]の最深部、[[ノーム]]が守っているのが[[幸せの石]]だとか。

そう、[[灰色の宝石]]を拾い上げてしまったときのことでした。それはとても重かったんです。私は[[よろめき]]、まともに歩けなくなってしまいました。歩き出す前に捨てればよかったろう、ですって? それはそうですけれど、何故かそれを捨てることはできませんでした。これは何か、よくない力が働いているに違いない!ああ、[[聖水]]−祝福された[[水]]があれば!

そこで、ゆっくりしか歩けませんでしたけれど、急いで[[泉]]を探しました。[[水]]を汲んで、神に捧げるために。

そう、そのとき−背負い袋から適当な薬を取り出そうとしたそのとき、脇に置こうとした[[灰色の宝石]]があんまり重かったので、それを持っていた腕ごと泉に[[浸す]]ことになってしまったんです。

腕ごと[[泉]]の中に持っていかれる、溺れる!と思ったときでした。[[泉]]の水が輝き出したんです。そして腕だけ、[[泉]]から引き上げることができたんです。[[灰色の宝石]]は[[泉]]の辺に残されました。

もう拾いません。[[重し]]なんて。

*アンホーリィと九つの命 [#l4acab57]

[[モリスさん>小猫]]が急に視界から消えてしまいましたが、[[落し扉]]の[[罠]]をよけてやっと[[階段]]を降りたのは、いろいろあってだいぶお腹が減ってからのことでした。背負い袋には[[乾し肉]]がありましたが、これは人の食べられるものではありませんでしたし。

[[階段]]を降りたところで、熱があるような気がして私は壁に手をつきました。と、急に背負い袋が圧し掛かって立っていられなくなり、次の瞬間には、視界が白く覆われて一瞬なにも見えなくなりました。

背負い袋を降ろし、視界を覆った白布を振り払って天井を仰ぐと、[[大こうもり>巨大こうもり]]が奇妙に高いところをふらふら飛んでいました。そのまま後ろを見ると、モリスさんの瞳が好戦的に−というか勝てそうだという野生の輝きで、私を見下ろしていました。見下ろして?

モリスさん、と思わず呼びかけた私の声は、きぃきぃと耳障りな鳴き声−ねずみの鳴き声でした!

ついさきほどのこと、垢じみてぼろをまとったあの少女にひっかかれたせいにちがいありません。[[ねずみ女>ねずみ人間]]!できるだけすみやかに退けるべき汚らわしい存在、薄汚れた彼女からうつされた、呪わしい[[獣化病]]!

私が[[ねずみ>ねずみ人間]]で、これが[[獣化病]]だとすると、あれは[[大こうもり>巨大こうもり]]ではなく[[こうもり]]で、モリスさんは[[猫]]で−私はねずみでした!背負い袋に潜りこみ、[[無色の薬]]の壜を転がし取り出して、しがみつくようにして栓をモリスさんが迫っていえいえいえ[[こうもり]]が来る!

…

[[狼殺し>トリカブト]]、狼殺し、狼殺し!生き延びたことへの感謝、人の子をものを食べるよう創られた神への抗議、そして元凶たる[[ねずみ女>ねずみ人間]]への悪態、三つを兼ねて三度唱えた後、[[こうもり]]の[[死体]]と[[乾し肉]]を見比べて−モリスさんには乾し肉をあげました。

* 関連リンク [#yf5417c8]

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[[GoogleImage:ホーリィの手記]]